外壁塗装業界の下請け構造と
手抜き工事が生まれる仕組み
15年現場を見てきた現役の塗装会社代表が、
業界の構造的な問題と、適正な業者選びの判断軸を整理します
そのお家、本当にあります。
なぜ起きるのか。業界の構造そのものに問題があるからです。
(残り半分は元請けの取り分・営業費・広告費に消える)
この記事は、外壁塗装業界で15年、自分自身も悪徳業者の側にいたイロドリ株式会社代表・吉田龍一の告白です。なぜ手抜き工事が後を絶たないのか。なぜ60万円という極端に安い見積もりが存在するのか。業界の構造を内側から知る人間として、本音で全部お話しします。
※ この記事は、YouTube動画「【告白】元・悪徳業者が語る外壁塗装の闇〜下請け業者の苦悩〜【後編】」(25,356回視聴)の内容を、業界経験を踏まえて記事化したものです。
私自身が「悪徳業者の側」だった時代の話
正直に告白します。私自身、外壁塗装業界に入った最初の数年間は、悪徳業者と呼ばれる側で働いていました。
と言っても、私が悪人だったわけではありません。修業時代、親方から指示されるがままに動いていただけです。「3回塗るところを2回で終わらせる」「下地処理は適当でいい」「塗料は薄めて使え」——そんな現場が、当たり前のようにありました。
でも、ある日気づくんです。「この塗装、3年も持たないんじゃないか」と。
同じ家を1年後に通りかかったときに、塗装が浮いている。剥がれている。ひび割れが復活している。本来10年持つはずの塗装が、3年でダメになっていた。
そのとき初めて、自分が何をしてきたのかを理解しました。あのお客様は、100万円以上のお金を払って、3年で剥がれる塗装を手に入れていた。そして、それを売っていたのは私だった。
独立しても抜け出せなかった「下請けの罠」
「これじゃダメだ」と思って、修業先を独立しました。自分の判断で、自分の責任で、ちゃんとした塗装をしたい——そう考えたんです。
独立してすぐは、自分で見積もりを作り、自分で塗料を選び、職人としてのプライドに従って仕事ができるようになりました。使う刷毛にいくらかけるか。安い刷毛で済ませて利益を増やすか、良い刷毛を買って品質を上げるか。そういう判断が、ようやく自分の意思でできるようになった。
でも、ここで新たな壁にぶつかります。「下請け業者」という立場の壁です。
独立してもお客様と直接話せない
独立した塗装業者の多くは、リフォーム会社・ハウスメーカー・工務店などの「元請け業者」から仕事をもらう下請けとして動きます。
つまり構造はこうです:
📊 元請け・下請けの関係
100万円
(リフォーム会社・営業会社)
50〜70万円
※ 元請けが30〜50万円を中抜きする構造。残った金額で塗装すべて(材料費+人件費+足場など)を賄う必要がある
お客様は元請け業者と契約します。お客様が払った100万円のうち、下請けである塗装業者に渡るのは50〜70万円ほど。残りの30〜50万円は元請けの取り分(営業費、広告費、利益、現場管理費)として消えていきます。
お金の問題 — 安すぎる発注額が手抜きを生む
下請けに渡る金額が少ないこと自体は、まだ我慢できます。問題は「現場の状態を見ずに発注金額を決めてくる」こと。
元請けは塗装の専門家ではない
リフォーム会社や営業会社は、塗装の専門家ではありません。お家全体のリフォームの中の一部として塗装を扱っているだけ。だから、本来であれば下請けの塗装業者と一緒に現場を見て、必要な工事を確認した上で見積もりを出すべきなんです。
でも、現実は違います。元請け業者が自分たちで「だいたいこれくらいだろう」と金額を決めて、お客様に見積もりを出してしまう。お客様が「3日後までに見積もりが欲しい」と急いでいる場合、特にこのパターンが多いです。
実際にあった事件 — 100か所のひび割れ
ある現場で、塗装工事に入る前に外壁を確認したら、100か所以上のひび割れが見つかりました。これは大掛かりな下地処理が必要なレベルです。
すぐに発注元(元請け業者)の担当者に連絡を入れました。「これだけのひび割れがあって、下地処理の材料費と作業工数がこの発注金額では到底足りません」と。
すると、担当者の返事はこうでした:
確かに担当者の立場で考えれば、後から金額追加・工期延長となったらお客様にも上司にも文句を言われる。面倒なことしかありません。
でも、ひび割れの下地処理をしないでそのまま塗装すれば、数年後に塗装が剥がれる可能性が高い。それは現場経験から分かっていました。
そのときは、自分の職人としてのプライドから、材料費を自分で持ち出して、職人を増員して、何とか必要な下地処理をして仕上げました。元請けからは「次の現場で埋め合わせするから」と言われましたが、これは業界の決まり文句で、実際には埋め合わせなんてありません。結局、自分が損をして終わるんです。
「ある工事で現場に入ると、外壁に100か所以上のひび割れがあり、大掛かりな下地処理が必要なことが発覚しました。私も発注元に連絡を入れて『100か所以上のひび割れがあって、金額や工期が厳しいんですけど』と伝えますと、発注元の担当者の返事は『再処理をしないで塗ってくれ』というものでした。確かに担当者からしたら、後から値段が追加になって工期も伸びたとなると、お客さんにも文句を言われて上司にも文句を言われ、面倒な事しかありません。しかし、ひび割れの下地処理をしないで塗装をしたら、すぐに問題が発覚するのは間違いありません。そのときは自分の職人としてのプライドから、材料費は自腹で持ち出し、職人の人数を増やして何とか終わらせました」
工期の問題 — 「雨でも塗れ」と言われる現場
お金の問題に加えて、工期の問題も深刻です。元請けは塗装の専門家ではないので、必要な作業時間を正確に把握していません。
本来14日かかる工事を「7日で終わらせろ」と言われる
外壁塗装は、塗料を塗る作業だけで終わりではありません。「乾燥時間」が極めて重要です。
- 下塗り後、十分に乾かしてから中塗り
- 中塗り後、十分に乾かしてから上塗り
- 各工程の間に必要な乾燥時間を守らないと、塗膜が剥がれる原因になる
この乾燥時間を含めて、外壁塗装は通常14日前後かかる工事です。でも下請けに「7日で終わらせろ」と言われるケースが珍しくありません。
選択肢は2つしかない
| 工期短縮の選択肢 | 結果 |
|---|---|
| ① 3回塗りを2回で済ませる(手抜き) | 塗料の寿命は3分の1に。3〜4年で剥がれる |
| ② 朝7時から夜10時まで作業時間を増やす | 職人が疲弊。近隣からのクレームも発生 |
「雨でも塗れ」と言われた現場
下請け時代、雨の日でも工事を進めるよう指示されたことがあります。「雨だから今日は中止します」と元請けに伝えると、「工期に間に合わないからやってくれ」「雨養生して塗ってもいい」と言われました。
塗装は基本的に雨の日にはやりません。塗料が水分で薄まって、本来の性能を発揮できないからです。それでも工期優先で塗らされる現場が、業界には確実に存在します。
もう一つよくあるのが、朝7時から夜10時まで作業させられる現場。実際にお客様から「夜9時を回ってるからさすがに非常識だ」と言われたことがあります。元請けに「お客様に迷惑だと言われています」と伝えても、「足場を翌日次の現場に持っていくから何とかしてくれ」と返されるだけ。
コミュニケーションの問題 — 元請けの説明不足
3つ目の問題は、お客様とのコミュニケーションです。下請け業者は基本的にお客様と直接やり取りができません。お客様の要望は、すべて元請けを介して伝言される構造になっています。
元請けからお客様への説明不足
外壁塗装は1週間〜2週間、家の周りで様々な作業をします。当然、お客様に確認すべきこと・お願いすべきことがたくさんある。でも、それが元請けからお客様にちゃんと伝わっていないケースが本当に多いんです。
- 近隣挨拶がされていない→ 工事開始日に近所から「勝手に始めるな」とクレーム
- 窓施錠の依頼が伝わっていない→ 高圧洗浄時に窓が開いていて部屋に水が入る
- 車両の駐車位置の打ち合わせ不足→ お客様の車が出せず迷惑をかける
- 塗装範囲の確認漏れ→ お客様が「ここも塗ってほしかった」「逆にここは塗らないでほしかった」
下請けからの伝達不足も発生
逆方向の伝達不足もよくあります。お客様が元請けに言った要望が、下請けの私たちに伝わらない。
- 「ポストを塗ってくれ」と言われていたのに伝わっていない
- 「カーポートを洗浄してくれ」と言われていたのに伝わっていない
- 「この部分だけ白にしてほしい」と言われていたのに伝わっていない
現場でお客様から直接聞いて初めて知る、ということが珍しくありませんでした。これらは全て、元請け・下請けの構造から生まれる構造的な問題です。
なぜイロドリは「自社施工」に切り替えたのか
こうした業界の構造的な問題を15年経験して、私は決断しました。「元請けを挟まない、自社施工の体制を作ろう」と。
2009年、イロドリ株式会社として独立。お客様と直接契約し、自社の職人で施工する体制を作りました。これによって変わったことが、たくさんあります。
| 観点 | 下請け時代 | 自社施工(イロドリ) |
|---|---|---|
| 料金 | 中間マージンで30〜50%上乗せ | 中間マージンなしで適正価格 |
| 工期 | 元請けの都合で短縮要求 | 必要な工期を自社で設定 |
| 説明 | 伝言ゲームで漏れる | 直接お客様と打ち合わせ |
| 下地処理 | 「省け」と指示される | 必要なだけ実施 |
| 塗装回数 | 2回で済ませろと言われる | 3回(下塗り+中塗り+上塗り)厳守 |
| 調査精度 | 図面ベースの簡易見積 | ドローン+60〜90分の現地調査 |
自社施工に切り替えてから、お客様の反応も変わりました。「説明が分かりやすかった」「対応が早かった」「不安が無くなった」——こんな声をいただけるようになりました。
下請け時代にも「お客様に迷惑をかけてはいけない」という思いはありました。でも、心のどこかで「最終的に謝るのは元請けの仕事だから」と逃げていた自分がいました。直接お客様と接するようになって、その甘えは消えました。責任感のレベルが、全く違うんです。
60万円で外壁塗装ができる業者の正体
YouTube動画でも触れていますが、私たちが「120万円」と提示する家の工事を「60万円でできる」と言っている業者が実在するケースがあります。倍の差です。
なぜ60万円で「できる」と業者が言えるのか
結論から言うと、多摩地域の標準的な30坪の家を60万円で適正に塗装するのは難しいです。適正な工事をすれば最低でも90万円〜100万円はかかります。それを60万円でやると言うなら、どこかを省略している可能性が高いです。
- 足場をかけない(梯子で作業 — 安全規定違反、上の方は雑になる)
- 下地処理をしない(ひび割れ・コーキングの劣化を放置)
- 1回塗りで完了(本来3回塗るべきところを1回だけ)
- 付帯部を塗らない(軒天・破風板・雨樋など追加料金扱い)
- 低品質の塗料を使う(耐用年数3年以下の塗料)
こうした「無料点検」「異常な低価格」を口実にした手抜き工事・追加請求トラブルは、国民生活センター|住宅リフォームの点検商法 でも相談件数の増加が公表されています。少しでも怪しいと感じたら、消費生活センター(局番なし188)に相談してください。
「役満」を決めている見積もり
こういう見積もりを、私は心の中で「役満」と呼んでいます。麻雀の役満は良い意味ですが、悪徳業者の役満は逆。手抜きのフルコンボです。
60万円で塗ってもらえれば、もちろん最初の見た目はきれいです。でも、3〜4年経った頃から塗膜の浮き、剥がれ、色あせが始まります。「3年でやり直し」になれば、トータルで適正価格より高くつくのは明らかです。
それでも安さで決めるお客様がいる
正直に言うと、私たちが120万円で出した見積もりに対して、60万円業者の見積もりを持ってきたお客様の半分くらいは、結局60万円業者を選びます。「説明はイロドリさんの方が分かりやすかったけど、金額が安いから」と。
「外壁塗装大学いろどり」を始めた本当の理由
こうした課題を解消するために、私は2021年からYouTube チャンネル「外壁塗装大学いろどり」を始めました。今では登録者2,993人、動画79本、総再生69万回を超えるチャンネルになっています。
限られた打ち合わせ時間では伝えきれない
お客様との打ち合わせは、通常1〜2時間。その中で、家の状態の説明、塗料の選び方、施工の流れ、保証の話——伝えるべきことが多すぎて、業界の本音まで踏み込んだ話は到底できません。
そもそも見積もりを提示するタイミングで「他の業者の見積もり書はこういうところに注意して」と言ってしまうと、ただ受注したい業者に見えてしまう。本当に大事な話ほど、その場では伝えにくいんです。
「外壁塗装は既製品ではない」
このチャンネルで何度も言っていることがあります。外壁塗装は、価格ドットコムで安い順に並べて買うものではない、ということ。
家電量販店で炊飯器を買うなら、どこで買っても同じ商品が届きます。でも外壁塗装は、職人がいて初めて完成する工事です。同じ「シリコン塗料」「30坪」でも、誰がどう塗るかで、5年後の状態が全く違います。
業界を健全にしたい
私のYouTubeチャンネルの視聴者には、外壁塗装で失敗してほしくない。「外壁塗装は失敗が多い」「後悔が多い」と言われ続ける業界を、どうにか変えたい。
そのために、できることを発信し続けます。元・悪徳業者だった自分だからこそ知っている業界の本音を、これからもお話しします。
このチャンネルを見た人全員が、外壁塗装で失敗・後悔したと言うことがないように。
よくある質問
「うちの見積もり、大丈夫かな?」と思ったら
多摩地域で外壁塗装をご検討中で、業者選びに不安がある方へ。
イロドリの代表・吉田が、現役のプロとして直接ご相談にお乗りします。

これは特殊な事例ではありません。下請け業者で真面目にやろうとしている職人なら、誰もが一度は経験している話です。業界の構造そのものが、手抜きを正解にしてしまう仕組みになっているんです。